アルバイトの次の一手は?
労働省『賃金労働時間制度等総合調査』と『毎月勤労統計』から、常用労働者一人あたりの一カ月平均労働費用の内訳を推計する。
なお、社会保険の算定ベースは標準報酬月額といわれるもので、超過勤務手当が増えればこれらの企業負担も増加するし、さらに労働保険(労災保険と雇用保険の総称)のベースは「名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」(6)であるからボーナスや労働の対価であるかぎりすべての手当が算入基礎となる。
それでも、標準報酬月額に対する保険料率は、政府管掌健康保険のケースでいえば、健康保険料率は九・五九%、厚生年金の保険料率は月例給に対して一七・三五%、労災保険は〇・五%(7)、雇用保険が一・七五%である。
すべてあわせると二九・一九%となる。
うち企業負担は、ほぼ一五%となる(8)。
そこで、ここで想定する残業手当を二万五〇〇〇円(今となっては多すぎるようにみえるが)とし、それにともなう社会保険・労働保険の企業負担は三七五〇円としよう。
すると、残業がない場合、残業手当の基準である基本給の何倍の労働費用を企業が負担しているかを計算すると、一・七一倍という億になる(9)。
かりに残業割増率が法定最低基準の二五%だとしよう(実際に二五%の企業が多い)。
この人が週四〇時間、月一七一時間働くとすると、一時間あたりの残業手当は二〇一八円となる(10)。
ところが、一時間あたりの人件費は二七六八円となる(11)。
つまり、時間外労働のほうが七五〇円も割安なのである。
現在の算定式でいけば、企業サイドからみて、残業手当がまったく負担とならない「割増率」は七一%なのである。
この算定基礎がおかしいことは明白だろう。
残業割増率は二五%のままでよい。
算定基礎を個人の労働費用(人件費)とすることこそが大切なのである。
算定基準が現行のままで、雇用確保のために労働協約による残業割増率を法定最低限の二五%に低下させている企業が出ている。
やむをえない企業内労使の苦しみはわかるが、それほ緊急避難にとどめてほしいものである。
繰り返しいうが、現行基準での七一%の名目割増率が、実質割増率〇%なのである。
実際は適格な労働力を確保するには、募集コストや育成コスト、育成時間などがかかるが、こうした点は無視している。
それでも、残業はこれほどの実質割引労働となっている。
これが、企業にとって残業の最大のイソセソティブとなっているのである。
実際、名目割増率はほとんどの企業で二五~三〇%である。
労働基準法の残業割増率の基礎を労働費用(人件費)とすれば、時間あたりの残業手当は現在の倍程度になる。
そうすれば、企業は残業を減らし、雇用を増やすであろう。
もっとも、総額人件費削減をテーマとしている経営者にとってすれば、とても受け入れられるものではないというであろうが。
実は、大企業ほど残業が多いのであるが、これは基本給以外の労働費用が多いこと、つまり裏をかえせば、残業させるほど割引効果が大きいことと無関係ではないだろう。
残業手当の基準額にボーナスや退職金積み立てなどの企業負担部分を組み込むだけで、企業は本当に残業を減らそうと真剣に考えるようになり、おそらく残業は減るだろう。
この政策を実行するのは好況のときのほうが適しているが、バブルのときでさえ、政府はこのテーマに本気になって取り組もうとしなかった。
なぜかマスコミもまったく無視した。
しかし、このようないびつなシステムは早期に改善する必要がある。
個別企業労使の枠のなかではなかなか実現するものではないが、高失業時代の到来を迎えつつある現在、国家レベルで実施に向けて早急に議論すべきテーマであろう。
それは時間にゆとりのある生活という観点からいっても有意義な政策である。
残業割増率算定基準へのボーナスや労務コストの算入によって、残業割増は文字通りの割増となる。
パートタイマー家族という単位で労働時間をみるとき、パートタイマーという働き方を検討する必要がある。
そもそもパートタイマーとフルタイマーの違いは何だろうか。
いうまでもなく労働時間の違いである。
パートタイマーの統計上の定義はいろいろあるが、日本労働研究機構が出版している『ユースフル労働統計二〇〇二』(二〇〇二年)の分類をみるのがよい。
それは次のように分類している。
①『毎月勤労統計』や『賃金構造基本統計調査』では「一日の所定労働時間が一般労働者より短い者、あるいは一日の所定労働時間が同じであっても一週の所定労働日数が一般労働者より少ない老」と定義されている。
②『就業構造基本調査』や『労働力調査特別調査』では「事業所においてパートと呼ばれ日毎月勤労統計。
『労働力調査特別調査』=「呼称パート」ている労働者」を呼称パートと定義している。
③『労働力調査』では週間就業時間別に雇用者数を調査しており、このうちの「週間就業時間三五時間未満の者」がパートタイム労働者とされることがある。
一方、法律上は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆるパート労働法)では、「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者より短い者」を「短時間労働者」と定義している。
二〇〇〇年におけるそれぞれのパートタイマー労働者比率は、①二〇・二%(『毎月勤労統計』)、②一三・五%(『労働力調査特別調査』)、③一九・八%(『労働力調査』)となっている②の呼称パートに、「嘱託その他」を加えると、二四・〇%となる。
パート労働法上の定義にもとづいて、一九九五年に実施された労働省『パートタイム労働者総合実態調査』(一九九六年発表)によれば、パート比率は一四・九%であった。
ここでは表示しないが、どの定義によっても、水準の違いはあるが、全体的な動き幅は一貫して上昇傾向にある。
さて、長い労働時間をいかに減らすか。
現在、短時間正社員をめぐる議論が始まっている。
たとえば、厚生労働省の「パートタイム労働研究会」におけるテーマの中心は、既婚女性を中心とする「パートタイマー」を「短時間正社貞」として、正社員身分を与えようとするものである。
オランダ型のワークシェアリソグが脚光をあびるなかで、ヨーロッパ諸国で導入されているパートタイマーとフルタイマーの均等処遇を日本においても実現しょうという試みである。
短時間正社員短時間正社員の概念については、一〇年以上も前に、中村圭介が的確な指摘をしている(中村、一九九〇)。
彼は、女子パートタイマーを三つの基準で類型化する。
①正社員か否か、②労働時間からみてフルタイムかショートタイムか、③雇用期間(常用か非常用か)である。
②の定義は、時間的にはフルタイムなのに「パートタイマー」という呼称の人たちがいるからである。
この類型化が合意するのは、ショートタイム正社員の存在可能性である。
中村はいう。
第三次産業でみられる正社員と同じ仕事、同じキャリアを歩むショートタイムの女子パートタイマーは正社員となんら区別できない。
事実、労務管理制度も整っているとみてよい。
ここではショートタイム正社員というカテゴリーをなぜにつくりだきないのかが不思議でならない。
もちろん、昇進スピードを遅らせるとか、賃金制度はやはり時間給をベースにせざるをえないとかの工夫は必要であるかもしれないが。
(六八ページ)女子パートタイマーを労務管理がいかにうまく処遇していくかという問題にとって重要な基礎条件の一つは、次のような意識を払拭できるかどうかだとわたくしは思っている。
つまりショートタイム労働者は正社員となるべきではない、そして女子特に中高年主婦は補助的労働分野につくのが普通であって、非正社員になるのが当然であるという意識である。
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